第2章

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全身がむず痒くなる程甘やかされている気がしてならない。 じゃれつくようなキスを沢山されてどんな顔をしたらいいのか全く分からなくなった俺に、赤川は果てしなく甘い。 「ほら、力抜いて寄りかかってろ。身体、怠いだろ?切れたりはしていない筈だけど……。今日はゆっくりしような?」 「…………………………う、うん」 ゆっくりしような……?やっぱり、帰らないつもりなのか赤川くん。 狭いワンルームのベッドに足を投げ出して座る赤川。…………の、足の間に固まる俺。 ………これは、あれでしょうか。一体どんなつもりなのかを問いただしても良いのでしょうか。 小心者の自分が恨めしい。それと同時に、自分が描いている漫画の主人公の気持ちがちょっとだけ分かった気がする。 恋をしたことがない俺は、単純に妄想だけで作品を作っている。だから細かい心情の描写が苦手で、プロになる前は作品を応募してもあちこちで同じ注意を受けていた。 今だってプロとは言い難いレベルだけど。アマチュアに毛が生えたみたいな、そんな立ち位置が自分の居場所だ。 そんな俺にいつも的確なアドバイスをくれるのが、恋愛経験豊富な赤川で。 それだけじゃない。今女の子達に何が流行っているか、とか。どんなデートだったら喜ぶのか、とか。例えばふたりの記念日に、どんなサプライズを望んでいるのか、とか。 とにかく細かい最新情報を集めてくれていた。モテる赤川には、彼女が途切れた事がないから。…………彼女。そうだ、彼女だ。 俺、もしかして彼女からしたら浮気相手とか言うヤツじゃないのか?例えたった一度の気の迷いでも、致したことには変わりない。 恋愛もしたことないのに、一気に三角関係の仲間入りだ。
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