第2章

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いつの間にか眠っていたらしい。座っていた筈なのに、ベッドに横になった状態で目を覚ました。赤川は居なくなっていて、夕闇の中机の上にメモを見つけた。 「…………バイトの日だったのか」 今更ながら、赤川には迷惑ばかり掛けている気がする。メモの横にはおにぎりが置いてあって、ひと(食べろ)と書いてあった。 「…………飯、炊いたのか。いただきます」 赤川は実家暮らしだが、母親が料理をするのが苦手らしく仕方無しに自分で料理を覚えたそうだ。炊飯器もない俺の家でも、鍋で飯を炊き軽い食事を作ってくれる。 もともと器用なんだろう。頭も良くて、性格も良くて、顔も良くて…………漫画の主人公のようだ。そんな男が、こんなに冴えない自分の友人でいてくれるんだ。 彼女を紹介して貰えないからって、なんだ。そもそも俺は家に篭ってばかりで、滅多に外出しないんだし。 もそもそとおにぎりを咀嚼しながら、赤川のことを考え続けていた。 あいつ、なんであの髪の色を戻さないんだろう。赤い髪は似合っているけれど、あれではまともに就職活動すら出来ない。能力は有るのだから、本当に勿体無いと思う。 赤川のバイト先は大手の本屋だ。この辺りでは一番の規模でなかなか品揃えも良く、俺もたまの外出時には必ず寄って帰る。赤川が俺と出会った時には、既にそこでバイトをしていた筈だ。 よほど気に入っているんだろうと思う。俺、長い時間赤川と一緒に居る割にはあいつの考えていることをほとんど知らないのかもしれない。
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