第1章

3/14
前へ
/314ページ
次へ
昨日…………いや、日付けはとっくに変わっていたから実際には今日だけど。ここ何日か最後の追い込みで徹夜を続けていた俺たちは、頭のネジが何本か飛んでいたらしい。 「おーーーわったああぁ!!お疲れ赤川~!ありがとなー!」 プロデビューして数年。売れない漫画家の俺には、アシスタントなんて大層なものは居ない。だからどうにもならなくなると、高校からの友人である赤川が善意で手伝ってくれている。 まあ、そうそうピンチにはならないけれど。 とにかくここ数日は部屋に篭りっぱなしで、赤川も泊まり込みをしてくれていた。締め切りに何とか間に合わせた俺達は、今日は打ち上げだなと二人で出前のピザを食べながら、ビールで乾杯をした。 俺の部屋は狭いワンルームだ。そこにベッドと作業用テーブルが置いてあり、男二人が並ぶだけで既に暑苦しさ満点だ。 だがそんな文句を言っても仕方がない。売れない自分が悪いのだ。最近では、真面目に自分の行く末を考えて落ち込む日々が続いている。 そんな中、珍しく単発で急ぎの仕事が入って、有難いけれど時間が足りないという状況に追い込まれてしまった。 有名な少女漫画の月刊誌。どうやら人気作家の穴が開いたらしく、その穴埋めに呼ばれたのだ。 はっきり言って大チャンス。気合いも入るってもんだ。少しでも多くの読者の目に止まりたい。俺は申し訳ないと思いつつ、赤川を呼び出した。
/314ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2453人が本棚に入れています
本棚に追加