2453人が本棚に入れています
本棚に追加
赤川は俺の頼みを断わった事がない。夢に向かって頑張っていた自分をいつも傍らで応援し、時には叱咤しながら支えてくれていた。
高校時代は周囲に少女漫画を描いている事をひた隠しにして過ごしていたが、三年の春何となく進路の話をした時に赤川にだけは打ち明けた。
赤川は真面目な顔で「…………すげえな、お前」と呟いて、翌日真っ赤な頭で学校に現れ、早速教師に呼び出されていた。
まあ、校則の緩い学校だったのと、生徒会長をやっていた赤川は成績も良く人気者だったから数日もすると暗黙の了解といった雰囲気が漂い始め、一ヶ月経つ頃にはすっかりトレードマークになっていた。
今考えても、何で俺達が仲良くなったのかが分からない。教室にひっそり生息する俺と、日の当たる場所でキラキラ輝いていた赤川。接点なんて何も無かった。
******
「…………ん?どうかしたか?」
「いいや、お前のその髪。すっかり見慣れたけどさ、いつまで続けるの?」
「…………さあ。いつまでだろうなぁ。ま、そんなことより乾杯しよーぜ?」
とりあえず出来上がった原稿は大切に纏めてテーブルのど真ん中に置き、頼んだピザとビールは床に並べて乾杯をした。
「…………ぷっはあ~~~!うめえぇ!!やり遂げるって、素晴らしいな、赤川!いつもありがとうな!」
「いや、俺も楽しいから気にすんな。ほら、お前こっちのが好きだろ?」
自分の手に取った照り焼きピザをこちらに押し付けながら、俺がもたもた食べていたトマト味のピザを取り上げる。
苦手なバジルに苦戦していたのを、見破られたらしい。
赤川との付き合いも、何だかんだで八年だ。俺の行動は、すっかり把握されていた。
最初のコメントを投稿しよう!