第4章

2/17
2445人が本棚に入れています
本棚に追加
/314ページ
人の声で目が覚めた。ぐっすり眠っていたようで、寝覚めがやけにいい気がする。 はじめは旅行中の赤川の両親が帰って来たのかと思った。でも、よくよく考えたらあと二、三日は帰らないと聞いた筈だ。 とにかく服を着なくてはと周りを見渡し、自分の服がハンガーに吊るされているのを発見した。洗濯された下着もジーパンと一緒に畳まれて、ベッドサイドに置いてある。 いい加減な自分とは違いあいつは相変わらず几帳面だと苦笑しながら、それらを急いで身につけた。 昨日重くて動かなかった身体は、多少痛むものの何とかなりそうだ。ゆっくりと動きながらドアを押し開けた所で、赤川と会話しているのが若い女性だと気が付いた。 直前までふわふわとしていた気持ちが、一気に固く自嘲的なものへと変化する。 ………彼女だろうか。今が何時かは分からないけれど、きっとまだ午前中だと思う。せっかく赤川に会いに来たのに、俺みたいな邪魔者がいたら良い気分はしないだろう。 「帰ろ…………」 振り向いて、部屋を確認する。万が一にでも俺達の関係がバレない様に、僅かな痕跡も残したら駄目だ。 まあ俺が眠りこけている間に、赤川が抜かりなく完璧に片付けていたけれど。 あれだけの行為をしていても、全く疲れた様子のないあいつの体力は、ちょっとした恐怖だ。
/314ページ

最初のコメントを投稿しよう!