第1章

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面白いように赤川に吸い込まれていくピザ達を眺めながら、そんなに食べて胃もたれしないのだろうかといつもと全く同じ感想を持った。 そこまでは、全く同じだったのだ。いつもの様に爽やかな顔をした赤川が、全く爽やかとは言い難い言葉を発するまでは。 「…………なぁ。なんか、ムラムラしねぇ?」 「…………はあ?…………何言ってんの、お前」 連日の徹夜による極度の疲労は、たった数本のビールでとんでもない威力を発揮したらしい。ザルの赤川を酔っ払いに変えるくらいに。 「…………何、お前もう酔ったのか?アホな事言ってないで、少し横になれ。俺はまだやる事あるし」 …………嘘だけど。 赤川のギラつく視線にビビっていたのだ。眼鏡の奥の切れ長の瞳が、ジッと注がれる事に動揺してしまった。 あれではまるで、俺相手に欲情したみたいじゃないか。…………ない、ない。ないだろ、あり得ない。 赤川も俺もホモでもゲイでもない。プロとして少女漫画を描いている以上、女の子の生態を知る必要があるとBL漫画も参考資料として大量に所持してはいるが。 読めない事はないけれど、特別好きな訳でもない。特に何の感慨も湧かないのだ。…………すっかり、ヤリかたなんかは知ってしまったけれども。あくまで、参考資料だと言える。 最近BL読んだから、変な勘違いするのかな。…………自意識過剰すぎるぞ俺。 そもそも同じ男であるという以上に、俺にはひとを惹きつける魅力がない。
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