第1章

2/2
前へ
/2ページ
次へ
いつからかな、私が彼を意識するようになったのは。 彼っていうのは、いつも出前を取るお蕎麦屋さん。 店の紋が入った白衣を着て、ヘルメットも外さずに、去っていく。 はじめは何とも思ってなかった。もちろん。 だけどそのそっけない態度が気になりだしたのは、元彼と喧嘩した時だった。 電話をかけて注文する電話越しにも、言い争いになった。 元彼は結局それを最後に出て行っちゃったんだけど。 その時出前の彼が、「だし巻き卵つけときました」ってサービスしてくれて。 一度だけ笑ってくれた。 それからは、恥ずかしいんだけど、インターホンがなると慌てて出ちゃって。 でも声を聞いたのは、その時だけで。 いつものそっけない態度で帰って行っちゃうの。 だけどね、たまに注文しなくてもついてる事があるんだ。 だし巻き卵。
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加