187人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
「無理だよ」
私の言葉にコージは愕然。顔面蒼白。ワナワナと唇が震えている。
「……い、今、なんて言った?」
「無理だよ、って言った……」
「この流れから、よく断れるよね?」
「私に断る権利はないの?」
「いやいや、ちょっと待って俺の事好きだよね?」
「好きだよ」
「一緒にいたいと言ったよね?」
「言ってないけど、思ってるよ」
「なら、なんで?」
「こっちこそ、なんで?」
「はっ?」
「はっ?」
「えっ、ちょっと待って、えっ、何? これ、何?」
コージは軽い、いや、重いパニックに陥った。私を見たり、視線を宙に彷徨わせたり、
「結婚なんて、非現実的だよ」
「だって、一緒にいたいんだよ」
その気持ちはすごく嬉しい……私だって泣きたくなるくらいコージが大好きだ……でも、でもっ、それとこれとは別問題!
だから、
「私だって一緒にいたいよ、コージの事、大好きだもん!」
素直に気持ちをうち明けた。困惑の表情から笑顔に変わり――、
「なら……しようよ、結婚。俺は堂々とみんなに言いたい、実尋と結婚するって」
コージの言葉は嬉しくて、ホントに泣きそうだった。胸がギュッとつかまれたみたい、
でもっ、私にだって夢がある。付き合って、デートして、一緒に幸せな夜を過ごして……恋人同士の時間をたくさん満喫して……って、それって、そんなに贅沢かな? 願ったらいけないの?おまけに――
「私コージの事何も知らない」
「えっ?……それは、俺だって」
私の言葉はコージの勢いを少しだけ落ち着かせた。
「好きなものも、好きな色も、好きな音楽も、誕生日も、血液型も、な~んにも知らない」
「だから、それは俺だって……同じだろ?」
「――なんで?――なんで、交際から始めてくれないの? 私は、コージの彼女になりたい、いきなり奥さんじゃなくて、コージの彼女になりたいのに」
「……」
「コージが大好きだから、彼女になりたいんだよ!」
私の想い、コージに届きますように……
最初のコメントを投稿しよう!