第1章

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シャワーを浴びてスッキリさっぱり、で、出てくるはずだったのに――、なぜか、今の私はアスリートのように、肩で大きく息をしていた。疲労感は半端ない。 そんな私に、コージは、フフンと鼻で高らかに笑い、 「ぴったり10分~、残念だなぁ~」 と、冗談なのか、本気なのか、わからないセリフを吐く。 「頭乾かしてあげるからおいで」 誘い文句は甘いが、手を引く強さは結構強引だ。なかば、無理やり座らされ、ゴォーと、ドライヤーの風をあてられる。 「ねぇ!」 「ん?」 「ねぇ!」 「ん?」 呼びかけているのに、コージは一向にスイッチを止めてくれないので、轟音のせいで、会話ができない。終わるのを待てばそれで済むのだけど、気分的には、1分1秒だって、待てない私の心情。 「ねぇっ!」 「何?!」 お互いに声を張り上げ叫んでる。 「どうして私の服あったの?」 「はっ?」 「私の服!」 「あぁ、お兄さんから預かった」 「兄から? 本当?」 信じられない思いでおもわず、後ろを振り返ろうとして、コージの手に阻まれた。 「嘘じゃないよ。本当、だから、ちゃんと、前見てて」 正面に戻された顔。 「兄に、泊めるって言ってたの?」 懲りない私に、根負けしたコージがドライヤーの威力を弱めてくれた。これで、何とか普通に話ができる。 「言ったよ、断られたら帰す約束でね」 2人の間にそんな会話が? 知らなかった…… 「――そう、なんだ」
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