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シャワーを浴びてスッキリさっぱり、で、出てくるはずだったのに――、なぜか、今の私はアスリートのように、肩で大きく息をしていた。疲労感は半端ない。
そんな私に、コージは、フフンと鼻で高らかに笑い、
「ぴったり10分~、残念だなぁ~」
と、冗談なのか、本気なのか、わからないセリフを吐く。
「頭乾かしてあげるからおいで」
誘い文句は甘いが、手を引く強さは結構強引だ。なかば、無理やり座らされ、ゴォーと、ドライヤーの風をあてられる。
「ねぇ!」
「ん?」
「ねぇ!」
「ん?」
呼びかけているのに、コージは一向にスイッチを止めてくれないので、轟音のせいで、会話ができない。終わるのを待てばそれで済むのだけど、気分的には、1分1秒だって、待てない私の心情。
「ねぇっ!」
「何?!」
お互いに声を張り上げ叫んでる。
「どうして私の服あったの?」
「はっ?」
「私の服!」
「あぁ、お兄さんから預かった」
「兄から? 本当?」
信じられない思いでおもわず、後ろを振り返ろうとして、コージの手に阻まれた。
「嘘じゃないよ。本当、だから、ちゃんと、前見てて」
正面に戻された顔。
「兄に、泊めるって言ってたの?」
懲りない私に、根負けしたコージがドライヤーの威力を弱めてくれた。これで、何とか普通に話ができる。
「言ったよ、断られたら帰す約束でね」
2人の間にそんな会話が?
知らなかった……
「――そう、なんだ」
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