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「あのっ、荷物の中身は……、兄貴が用意したの?」
聞いても無駄だとわかってはいたけれど、聞かずにはいられなかった。
「そうだよ、俺は玄関先で待ってたからね……」
「そっか……あの変態兄貴め」
小声で悪態をつく。
あの下着も兄貴が用意したことに、グッとひそめた眉。俯いていたため、ニヤリ口角をあげていたコージに気付かなかった。
コージは静かにそっと屈みこんで、下から私を覗きこむような仕草をする。
「何? 何が聞きたいの?」
「べ、別に……」
ははっと笑って誤魔化したつもりだったのに、
「あぁ、そっか、もしかして、今はいてるピンク色の下着のこと?」
核心をつかれて、言葉につまる――、っていうか、その発言セクハラだよね!
「や、やっぱり見た?」
って、洗面所に置いてあったということは、コージが置いてくれたんだろうけど……
「もちろん♪鞄から出した時、驚き過ぎて、二度見しちゃった♪」
「ギャボッ!」
変な声が出た。
「俺、誘惑するつもり?」
「ま、まさかっ!」
恋愛初心者の私にそんなスキルがあるはずがない!アタフタする私に、クスクスと余裕の笑み。なんだか悔しくて、涙目で抗議しようとしたら、
「ごめんごめん、冗談が過ぎたね……心配しなくても、これは実尋のお兄さんの、俺に対する嫌がらせだよ」
「嫌がらせ?」
「そっ、わざと刺激的なのを用意して俺を試してるんだよ」
「試す?」
何を? わからない言葉が次々と出てきて、私は混乱していた。
「俺が実尋に手を出すかどうかのね」
「……」
「お兄さんの逆鱗には触れたくないから、今日は何もしないよ」
「……それって、兄と約束したってこと?」
「まっ、そういうことになるかな」
「……」
それって……どうなの? なんか、めっちゃ、恥ずかしいんですけど……脱力しそうな私に、
「身体が冷える前に、ベッドに行こう」
と、背中を押され、私たちは寝室へと向かった。
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