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119(承前)
「あと3分も、立って、いられそうに、ない。勝負を、急ごう」
自分でも情けない声が出て、驚いてしまった。実際にもう体力の限界にきているのかもしれない。ジョージに仙骨にある栓(せん)を抜いてもらった予備タンクも、空(から)っぽが近いのだろう。
「そうか…わか…った…おま…えと…おれ…の10年…以上…に渡…る確執…も今日…で…終わり…だな…おまえ…の屍(しかばね)…を乗り…越えて…おれは日乃元(ひのもと)の軍神になる」
タツオはおやっと思った。最後のほうでカザンの言葉がまともに聞こえたからだ。それともこれは空耳だろうか。
いよいよ、これで決着だ。タツオは残された体力を「止水(しすい)」に流しこんだ。膨(ふく)らんでいた淡い銀色の知覚の被膜を、もう一度凝縮させる。もうカザンのどんな予備動作でも見逃すわけにはいかなかった。
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