119(承前)

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「さらばだ、逆島(さかしま)断雄(たつお)」  幼馴染(おさななじ)みが叫んだ。もう聞き違いではなかった。「止水」のクロックアップが土壇場(どたんば)で最終段階に到達したのかもしれない。タツオの耳は正常にカザンの言葉を聞きとっている。敵を欺(あざむ)くために身体(からだ)はまだ使用していないが、通常通りの速さで動けそうな手ごたえがある。もっともぶっけ本番なので、タツオにも今後どうなるか予想はつかなかった。  左右に身体を振りながらカザンが疾風(しっぷう)のように襲いかかってきた。タツオの狙いはすでに絞られている。ジョージが必殺だという第3の発勁(はっけい)を叩きこんだ左胸だ。あそこに自分に残されたすべての力をこめて右の拳(こぶし)を叩きこむ。その後のことは、この身がどうなろうと構わなかった。今は須佐乃男(すさのお)の正操縦士が誰になるか気にしている余裕などない。
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