早田君、はじめまして

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-三澄紗央(みすみさお) 「もうすっかり夏だねー。あっついわ」 「この前の雨で、梅雨明けちゃったのかな?」 気持ちが良いくらい、晴れ渡る空には雲一つない。 湿り気のない微風に、私の髪の毛は揺れる。 七月中旬、もうすぐ夏休みを迎えるこの時期。 高校に入学して初めての長期休暇を前に、私はワクワク胸を躍らせていた。 「夏休み、紗央はバイトとか考えてる?」 「バイトかぁ。したことないし、考えてみようかなぁ」 夏休み、皆はどんなことをして過ごすんだろう。 一応部活は製菓部に所属しているが、運動部でもないし、そこまでの活動もないだろう。 「宏美(ひろみ)ちゃんはスーパーでバイトしてるんだっけ」 「週末だけね、やめたいけどお金は欲しいから」 自由に使えるお金かぁ……。 小さい頃から物欲がなく、欲しいものなどない。 休日も外へ出る機会は少なく、家で大人しくしていることが多かった。 「そういえば、次の部活っていつあるんだっけー?」 「明日だよ。確かフルーツポンチを作る予定だったはず」
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