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教室に戻ると、中には真司しかいなかった。
1人で、真ん中あたりの机に座って携帯を触っている。
だけど、あたしが声をかける前にこっちに気付いた。
「おまたせ」
「ん」
携帯をポケットにしまい、カバンを肩にかけてあたしに歩み寄ってきた。
そして自然にあたしの手を取り、あたしの歩幅に合わせてゆっくり歩いてくれる。
「...今日、泊まる?」
ああ、今日、金曜日か。
「...うん」
真司はご両親と3人家族だけど、共働きだそうで、1日家に真司しかいないというのもまれではない。
だからそういう金曜日は、だいたい彼の家に泊めてもらう。
真司は、あたしが家にいれないということだけは知っているから。
あれは、中学3年の年の、1月のある日。
その日も家には、あたしの代わりに男がいた。
だからあたしは家にはいれず、いつものように外に出ていたのだ。
だけどその日は、雪が降っていて。
寒くてたまらなくて、正直あの歓楽街に行くのが億劫だった。
今までの数年間、雪の日なんて何回もあったけど。
なぜかその日は、どうしても足が進まなかった。
行かなきゃ、外でこのままなんて絶対無理。
そう分かっているのに、あたしは近くの公園のベンチに座って、じっとしていた。
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