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あたしの家から少し歩くと、賑やかな歓楽街がある。
真っ暗な夜を照らす、眩いほどのネオンに惹かれるように、あたしはそこへ向かっていた。
だけどそこに辿り着く前に。
ふいに腕を掴まれ、声を掛けられた。
振り向いた先には、さっきあたしを抱いた男と同じ、“男”の目があった。
ーーなのに。
『君、いいね。いくら出そうか』
あたしは、逃げなかった。
それどころか、男の人に黙ってついていった。
ついていけばどうなるか、嫌になるほど分かっていたはずなのに。
男から逃げるために、男を頼った。
あの時のあたしは、決して冷静ではなかったけど。
あの日あたしは、知ったんだ。
自分を求めてもらえる、自分の“居場所”の見付け方を。
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