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「美莱帰ろー!」
「はいはい今行きます」
相変わらずテンションの高い声に、あたしは自分のテンションで返事をする。
だけどそれはいつものことで、亜由佳もさして気にしていない。
「聞いて聞いて!さっき携帯で見たんだけど、あの人彼氏いたんだって!」
「あの人って誰よ」
「えっと、待ってね、ど忘れした」
うーんと考え込む亜由佳に笑いながら、カバンを肩にかけて、亜由佳が待つ廊下に向かって歩き始めた。
「あ!思い出した!穂奈美ちゃん!」
「ああ、あの人」
穂奈美ちゃんとは、亜由佳が愛読する雑誌のモデルさん。
亜由佳のイチオシの人だと前に熱弁されたから、よく覚えていた。
だけどあたしはその雑誌を読んでいないし、その人のファンというわけではないから、亜由佳とは少なからず温度差がある。
「もう!ちょっとは興味持って!」
飛び跳ねる勢いでむくれる亜由佳に、
「持ってる持ってる。相手誰なの?」
と、一応反応しておいた。
まぁ正直、全然気にならないわけではない。
「怪しい...」
拗ねたように唇を尖らせ、あたしをじっと見つめる亜由佳。
「じゃあもう聞かない」
「嘘!ごめん!相手はねぇ、カメラマンさんだって」
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