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「ビョルン、何度言えばわかるんだ」
白髪混じりの父が棒を片手に頭を抱える。その隣で表情を曇らせる4人の兄たちの視線が痛い。
「いいか、お前は宰相である儂スヴェンの子だ。王族の誰もに平等に接しなければならない。誰か一人に仕えるなど……王以外には絶対あってはならない!」
殴られたせいで口の中がサビ臭い。
「……あいつは、ボクの友達です。あいつだってそう言って……」
「王とあの女が再婚する前だったからこそそれが許されたのだ。どうしてわからない?理解しようとしない?」
「ボっ、ボクは……だって」
「……もういい」
暫く、この部屋に閉じこめておけと言い残して父は部屋を去った。
「諦めろビョルン、その方が楽だ」
「クリストフェル兄さん……」
「立場をわきまえろ。お前は、まだ子どもなのだから」
「アルヴィド兄さん」
一言ずつ残して上の兄さんたちがいなくなって、あとは4つ上の双子の兄さんたちだけになった。
「ヘンリク兄さんとエリク兄さんも、そういうの?」
「「……」」
兄さんたちは互いに顔を合わせると、床に座り込んだぼくのそばにしゃがむ。
「実を言うと僕達は」
「父さんの意見に反対」
ホッと息をつこうとしたのに。
「そんなんじゃ八方美人って言われても仕方ないしね」
「1人1人分かれて仕えていたほうが効率的だ」
一気に奈落の底に突き落とされた気分だ。
ボクはただ、エーヴェルトとずっと友達でいたいだけなのに。
「どうしてって顔だね、ビョルン」
「こんな家に生まれたのだから、そろそろ腹を括れ」
ついに二人も出て行った。
「ビョルンにいさま?」
そろそろと入ってきた小さな妹を見上げる。
「……ないてるの?」
「……っ」
みっともないと呆れられても仕方ない。
妹の前で声を上げて泣く兄なんて。
「どこかいたいの?」
「うん……セルマ」
辛くて、悲しくて。
つい妹にそれをぶつけてしまう。
「ボク、エーヴェルトと、もう…っ、普通の友達でいれないって。どうしてかなぁ、わからないよ……っ!」
床に座り込んでえぐえぐと泣きべそをかくボクの頭に、小さな手のひらがふわりと乗せられる。
「ビョルンにいさま、いいこいいこ」
「セル、マ?」
「アタシは、ビョルンにいさまのみかただよ。だってアタシも、エーヴェルトのことすきだから」
「っ…ぇ!」
うわぁぁんと、声を上げて泣いた。
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