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「……っ!」
目が覚めると、薄暗い天井がぼやけて見えた。
いや。
「……泣いてたのか」
涙の跡を消そうと、目の辺りや耳のあたりをごしごしと擦る。
「どう、したの?」
横で眠っていた女が頭をもたげる。
「お前には関係ない。」
素っ気なくオレは返した。
この女はこの辺りを任せられている男の娘だ。
娘を差し出すことで、王に継ぐ権力者、宰相スヴェンの息子であるオレに取り入るつもりだったのだろう。だが体臭が生理的にムリだったので抱くことはできず、女が父親に叱られないよう添い寝してやったのだ。
「そんな態度とられると私、余計あなたに惹かれちゃうわ…」
ぞわっと鳥肌が立った。
女がオレの肩をそぅっと撫でたのだ。
「ねぇ、二人で楽しいことしましょうよ…」
むき出しの乳房を肩に押し当て顔を近づけて来ると、オレの苦手な臭いが鼻を伝って吐き気がこみ上げた。
絶対にムリ!ムリムリムリマジであなたムリですごめんなさい!
脳内でパニックを起こしてそんなことを心の中で叫びながらも、余裕ありげにオレはゆっくりと起き上がる。
寝る前に酔わせたので、寝ているうちに何かされたわけではない。しかし今は危ない、絶対危ない。
「……オレそろそろ行くわ。次の目的地まで急がないと」
「もぅ、一回くらい良いじゃないの。つれない」
甘えるように背中に体をもたれかけられたが、この女に何されても鳥肌が立ったので、さっさと立ち上がると上着に袖を通した。
この家には二度と来たくねぇ。
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