第1章:第七領地

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「……っ!」 目が覚めると、薄暗い天井がぼやけて見えた。 いや。 「……泣いてたのか」 涙の跡を消そうと、目の辺りや耳のあたりをごしごしと擦る。 「どう、したの?」 横で眠っていた女が頭をもたげる。 「お前には関係ない。」 素っ気なくオレは返した。 この女はこの辺りを任せられている男の娘だ。 娘を差し出すことで、王に継ぐ権力者、宰相スヴェンの息子であるオレに取り入るつもりだったのだろう。だが体臭が生理的にムリだったので抱くことはできず、女が父親に叱られないよう添い寝してやったのだ。 「そんな態度とられると私、余計あなたに惹かれちゃうわ…」 ぞわっと鳥肌が立った。 女がオレの肩をそぅっと撫でたのだ。 「ねぇ、二人で楽しいことしましょうよ…」 むき出しの乳房を肩に押し当て顔を近づけて来ると、オレの苦手な臭いが鼻を伝って吐き気がこみ上げた。 絶対にムリ!ムリムリムリマジであなたムリですごめんなさい! 脳内でパニックを起こしてそんなことを心の中で叫びながらも、余裕ありげにオレはゆっくりと起き上がる。 寝る前に酔わせたので、寝ているうちに何かされたわけではない。しかし今は危ない、絶対危ない。 「……オレそろそろ行くわ。次の目的地まで急がないと」 「もぅ、一回くらい良いじゃないの。つれない」 甘えるように背中に体をもたれかけられたが、この女に何されても鳥肌が立ったので、さっさと立ち上がると上着に袖を通した。 この家には二度と来たくねぇ。
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