あの人のこと

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佐藤君と会って一年は、気になる訳でも、好きな訳でもなく、ただ理想の見た目の人に会えたっていう嬉しさがあっただけ。 恋愛対象として見てなかった・・・。 無口で、余計なことは言わない。 自分の考えや意見も、めったに言わない。 でも、周りに気を配って、必要なことをしっかりと見極め、行動できる人。 学年トップの学力。 運動神経もいい。 欠点があるとすれば、話しかけてもそっけない言葉しか返ってこない。 必要な事しか話さない。 根気のある女子が仲良くなろうと話しかけ続けた結果、 「うざい・・・。」 そして、最後には、何と無視・・・! その女子があまり気にしない人だったから良かったものの、 皆、その時初めて、性格の悪さ、あるいは協調性の無さを目の当たりにして、衝撃を受けたものだ。 「あんな人だとは思わなかった・・・。」 中には、驚くよりも、嫌いになる人もいて・・・。 私も驚いたけど、嫌いにはならなかった。 嫌だと思いながらも態度に出さないっていうのは、正直、信用できなくなるからやめてほしいと思う。 言い方はアレだけれど、きちんと拒絶したことについては、 はっきりしていていいと思えた。 そう思えたのも、普段の佐藤君のいい人ぶりを見ているからだろう。 普段は、礼儀正しく、やることはしっかりするし、クラスの話し合いで行き詰ったりすると、うまく皆の意見や協力を引き出してくれる。 他のクラスメイトも、無理に関わろうとしなければ、害はないと判断したことだろう。 そんな、「いい人」が、「気になる人」に変わったのは、春の入部者歓迎会だった。
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