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「健太って、かわいいよね。俺、健太みたいに素直でかわいい子、超好き」 「おい、西田」  西田からの「超好き」宣言に健太が絶句し、その側では、内藤が不機嫌さ全開で西田のことを睨みつけている。 「決勝、健太に絶対見て欲しいなぁ……あ、でも内藤も出るから見てるか。マネージャーだし当たり前だよね」 「え……あの」 「健太が見てくれてるって思うと、テンション上がる! 俺、絶対に一位とるから。応援よろしく!」 「西田!」  さらには「勝利を君に」などとバカなことを言い出した西田へ、とうとう苛立ちが沸点に達したのだろう、内藤は西田の首根っこを掴むと、「絶対だよ」と言ってへらへらと健太へ手を振る彼を引きずって、何処かへ行ってしまった。 「内藤……」  その場に残された健太が呆然と内藤と西田の姿を見送る。  最初に会場入り口で見かけた西田と、今しがた目の前にいた西田との印象が、あまりにも違いすぎる。  西田は黙っていれば威圧的なオーラさえ感じさせる風貌なのに、ちょっと口を開けば、たちまち雰囲気がガラリと変わってしまうのだ。  あれは本当に同一人物なのだろうかと、呆然とする健太へ西條が声をかけた。 「久米、大丈夫? びっくりしただろ?」 「あ……まあ、うん」 「ああ見えて、内藤と西田って仲良いんだよね。あの二人、中学まで同じ学校で、試合になると優勝争いしてたんだ……まあ、争ってたのは水泳だけというわけでもないけど…………なぜかいつも好みが被るんだよねえ」  そう言うと、西條が健太の顔を見てなんとも言えない表情をした。  そんな含みをもたせた様子で何か言いたげな西條を見て、健太が首を傾げたが、西條は曖昧に笑っただけで特に何も言わない。 「久米はそのままでいいよ。それと内藤だけど、多分……というか、今日は優勝すると思うから」 「え?」 「ああなると強いんだよね、あいつ。まあ、あとはインハイのタイムが切れるかどうかなんだけど」  疲れが残るからと再三注意をされても、結局内藤は試合前日まで自主練をやめなかった。西條も最後には何も言わなくなったが、やはり内藤のコンディションは気になるようだ。 「練習、頑張りすぎるのもよくないって、難しいんだね」 「まあね。普通は試合の日程に合わせて練習量を調節するんだ。だから今回の内藤は問題外。いくらインハイに行きたいからって無茶しすぎなんだよ」
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