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※※※※※
「なあ、ほんとによかったのか?」
空港のベンチで健太の隣に座っている西條が、健太の腕に自分の腕を絡めた。心配そうに健太の顔を覗き込む。
「うん、大丈夫。俺が来なくてもいいって言ったし」
「久米」
病気の治療のため、今日、健太は日本を発つ。
あまり大げさにしなくていいよ。という健太の希望で、見送りは西條と稲木の二人だけだ。
本当は内藤も見送りに来ることになっていた。だけど健太が「見送りに来る時間があるなら練習、頑張って」と言って内藤の見送りを断ったのだ。
「俺、内藤と一緒に頑張ろうって約束したから」
内藤は結局、個人種目でのインターハイ出場は叶わなかったが、リレーメンバーとしてインターハイへ出場できることになった。
半月後の本番に備えて今日も練習をしている。
「それに、内藤とは昨日会えたし。だから大丈夫」
なにやら白い小さな包みをぎゅっと握りしめ、健太が自分に言い聞かせるように呟く。
「それよりも、インターハイ頑張って。俺もあっちから応援してる」
晴れやかな笑顔を見せる健太からは、これから日本を離れてひとり外国で闘病する不安は感じられない。
健太の表情を見た西條も「わかった」と安心したように笑った。
「――――あのさ。俺、この間の試合の後、有吾と話をするって言ってただろ?」
「うん」
「あれ、実は……」
西條がきょろきょろと周囲を見渡す。
近くに誰もいないのを確かめると、健太の耳元へ顔を寄せた。
「西條くん?」
「俺、有吾と付き合うことになった」
「ええっ!」
「ちょっ、久米。声、大きいって」
驚く健太の隣で西條が顔を真っ赤にしている。
「もしかして、西條くんから告白した?」
「や、それがさ……」
実は稲木の方から告白されたと聞いて、さらに健太が驚きの声をあげた。
「おい前たち、なに二人で盛り上がってるんだ?」
「あ、稲木さん」
「はい、これ。久米は紅茶で万里はコーラだったな」
「ありがとうございます」
健太が稲木から紅茶のペットボトルを受け取る。同じように西條もコーラのボトルを受け取ったが、稲木が隣に座ると、まるで借りてきた猫のようにおとなしくなってしまった。
(西條くん、可愛いなあ)
さっきまで大騒ぎしていたのに、今の西條はまるで別人だ。
「で? 二人は何を騒いでいたんだ?」
「えっ……え、や、別に何でもないし」
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