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明るい水色の空に、ところどころ白い雲がぽっかりと浮かんでいる。
容赦なく照りつける太陽は足元のアスファルトをジリジリと焼いて、そこから立ちのぼる熱気が体感温度をさらに上げる。
(暑い)
こめかみから顎へと伝った汗がポタリと地面に落ちて、それはあっという間に消えてなくなった。
日本独特のじっとりとした湿度を伴う暑さには、とうてい慣れそうな気がしない。
「…………あ」
少しの息苦しさを感じながら、もう一度空を見上げて、そこにある水色がプールの底と同じだと気がつく。
現金なもので、それに気づいた途端、足取りが軽くなった。
「あとラスト三本! 気合入れていけー!」
はい、という返事の代わりに水飛沫があがる。
夏の室内プールにいると、まるで自分が温室の中の野菜にでもなった気分になる。
「――――それとも熱帯雨林のジャングルか?」
ひとり苦笑しながら、内藤が首にかけたタオルで汗を拭う。
「俺も一緒に泳ごうかなあ。って、無理か」
四角い水色のプールの中で泳ぐ生徒らを見ていると、自分も今すぐプールの中に飛び込んでしまいたい衝動にかられる。
二、三年前だったらそうしていたかもしれないが、さすがに大学卒業を機会に引退して二年も経つと、本気で泳ぐ現役高校生には体力的についていけない自信がある。
「先生、終わりました」
内藤がぼんやりとプールの水面を眺めていると、小柄な男子生徒がバインダーを胸元に抱えてやって来た。今年マネージャーで入部した生徒だ。
「おう。それじゃあ、今日の練習は終了」
「――――え?」
「なんだ?」
「いや……いつもなら、追加であと百を十本とか……」
「追加練習したいのか?」
「え、あの、それは遠慮しておきますっ」
慌てて頭をさげる姿が可愛らしい。何気なく内藤がその生徒の頭をクシャリとかき混ぜると、彼は頬を赤く染めて俯いてしまった。
控えめで、すぐ顔を真っ赤にするところが久米に似ている。
「先生」
「うん?」
「今日、なにかあるんですか? その、みんなが聞いてこいって。今日の先生、えらくご機嫌だから絶対なんかあるぞって……練習も早く終わるし」
「機嫌よく見えるか?」
「はい」
男子生徒が内藤の様子を窺うように上目使いで見上げてくる。
内藤はそれに「まあな」と答えた。
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