第1章

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吾輩は喪女である。需要はまだない。 生まれてからこの方、殿方とお付き合いしたことがない。吾輩は今年で20歳になるから、約20年間貞操を守ってきたことになる。 それどころか、殿方から交際を申し込まれたことも一度もない。小学校、中学校、高校、現在在籍している大学に至るまで、男女共学に通ってきた。それにも関わらず、ただの一度もない。 友人と仲良くなるうちに、以上のことを話すことがある。その度に驚かれるのだ。無理もないだろう。普通の女子であれば、きっと交際を申し込まれたことも、お付き合いをすることも当たり前なのであろう。吾輩はその当たり前を実感することが未だに出来ぬ。 吾輩なりに、服装や言動、化粧などを女子らしくするよう努力は試みるものも、どうも上手く行かぬ。気になる殿方が今まで累計で2人程居たが、どちらにも他に可愛らしい恋人が出来たようだ。吾輩は悲しくてならん。 友人から、恋人が居そうだとか、殿方から好意を持たれていそうだとか言われることがある。恐らくこれはお世辞であろう。言われるととても嬉しい気持ちになるのだが、同時に、それが本当ならばとっくに好きな殿方と上手く行くはずではないかとも思うのである。 吾輩にはいろいろなものが足りぬ。女らしさが致命的に足りぬ。駆け引きする賢さも足りぬ。むしろ足りている所を探すのが難儀な程に、足りぬところばかりである。くしゃみがやたら大きいこと、時たま男言葉が出てしまうこと、この部分はどうにもこうにも女子としていかんとは思うが、なかなか直せぬ。努力する次第である。 こんな吾輩であるが、一度だけで良いので殿方とお付き合いしたい所存である。 ただ、吾輩のような女でも付き合えると言う殿方が現れるかと問われれば、それはもうかなり少ない確率だろうと考える。 最近失恋したおかげか、より一層悲観的に捉えてしまう。 なるだけ前向きにしてみようと思う。物事は後ろ向きばかりで考えてもいかん。 次のお話より、吾輩の高校時代の恋愛話をする所存である。
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