第1話ー1.『まみゆ』

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やられた。 「じゃ、じゃあ、よろしくね」 そう言って私の目の前から立ち去る彼女。 上の方で一つに結わえられた黒髪がサラサラと揺れる。 “やられた”、という呆然とした思いで遠ざかる彼女の左右に揺れる黒髪をぼーっと見つめていると、「話はついたか」と頭上から声が振ってきた。 見上げると、端正な顔が私を見下ろしている。 「時間はあるか?  明日からの仕事の打ち合わせをしたいのだが・・・」 遠慮がちな言葉遣いの割には、その無表情のせいか威圧感を感じられずにはいられない。 私の頭は自然とこくりと頷き了承の意を示す。 彼はそれを確認すると歩き出し、私はその後につづいた。 まるで、心が灰色の薄い幕に覆われてゆくような、 陰鬱な気分で。 .
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