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ミントグリーン色のカクテルは、程よく甘くて、ペパーミントの香りと舌触りが滑らか。
『美味しいっ。これ、なんていうカクテルですか?』
『アレキサンダーズシスター。気に入ってくれた?』
『すごく好きな味です。』
ふふっと微笑んでから、軽く目を閉じるクセと共に、琥珀色を傾ける部長からは色気がだだ漏れで。
2人掛けソファーの近い距離じゃ、部長を見つめるのは限界があって、私も一口分だけグラスを傾けた。
『ね、彩星。こっち向いて?』
グラスの脚に絡めていた指を1つずつ解かれて、持っていたグラスが部長に奪われて。
『この前、出来なかったことしよ?』
部長が琥珀色の中で泳ぐ氷を、中指で転がしている。
Carib starに行ったあの夜を思い出した。
初めて、部長とキスした夜。
『聞いてる?』
『聞いて…ます。』
私が思う、この前は、温泉デートのことで。
そして、温泉で出来なかったことと言えば……。
『……っ。』
グラスに浸されていた部長の中指が不意に唇に触れて、割って侵入って(はいって)きた。
部長は熱を帯びた瞳をしていて、私に呼吸を忘れさせる。
『んっ。』
中指で触られた舌から伝わってくるのは、飲んだことのないカクテルの香りと、痺れそうな甘い感覚。
『おいし……。』
そっと出ていった中指を咥えて、部長が呟いた。
『この前、出来なかったのさせてね。』
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