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私が答えに迷う間、部長が琥珀色を流し込む喉元に、ただただ釘付けになってしまう。
頭だけはフル回転してるけれど、ついていけなくて。
『彩星も、すぐそういう表情(かお)をするんだから。』
かぁーっと熱を持ち始めた頬を覆い隠そうとしたのに、その両手は部長の片手で容易く纏められた。
グラスの琥珀色に、再度浸された中指が、ミントとブランデーの香りを私の唇に塗る。
『……これ、飲んでみる?』
コクンと頷いて、手が解かれるのを待っていたけど、グラスを取ったのは部長。
そのまま自分の口にカクテルを含んで、妖艶な瞳に私を映すと、顎に指を添えてきて。
少し上を向けられた私の顔。
2人の距離が、見えなくなっていく。
口の中に広がる強いアルコールは、喉を通って私の中に染みながら、じわじわと、印を焼き付けていくみたいだ。
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