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『はぁー……恥ずっ。』
ついさっきまでの私を見ているみたい。
部長が俯いたせいで、カチューシャにしてたサングラスが正しい位置に下がって。
『……彩星、その顔、マジで禁止。』
『えっ?……わっ!』
部長は突然立ち上がって私の腕を引くと、階段を上り始めた。
座っていたところに置いていたサンダルすら、持つ間もなくて。
『ぶ、部長っ!サンダルっ。』
何も言わずに、部長は進んだ分の歩を戻すと、ストラップに指を掛けてから、私の顔を覗き込んだ。
『俺にだけ見せて、その顔。』
そして、抱き上げられた私の視界は、海の青から空の青に切り替わって。
潮の香りと一緒に、大好きな甘い香りが、浮いた私を包んでいる。
『あ、あのっ…。』
部長に抱き上げられた私の、困惑と照れと。
周りからの視線の痛さと、止まることを知らない鼓動。
『俺が彩星のこと、どれくらい好きか教えてあげるから、覚悟して。』
階段を上りきった、海が一望できる高台。
車を停めた場所へ繋がる市道。
サンダルを置いた上に、そっと下ろされて。
アスファルトからの反射が眩しくて熱くて、顔を背ける。
『彩星。』
部長がサングラスを私の頭に乗せた。
『……?』
私を見つめるその視線は、どこまでも真っ直ぐで透き通っていて。
『好きだ。だから、離れるな。どこにも行くな。俺のそばにいて。……ずっと。』
頭の後ろに手を添えられて、部長の瞳に私が一杯に映って。
太陽と同じくらいに熱くて、チョコが溶けたように甘くて、柔らかい体温が重なった。
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