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両肩を押されて、おでこが離れた。
だけど、部長のことを真っ直ぐ見れなくて。
何も後ろめたくないのに、見れなくて。
『あの子は、Love your LIPのモデルさん。海外が長いから、ハグしたりしてくるんだ。それだけ。』
今度は、私が作った沈黙を部長が破った。
それに頷くことしか出来なくて。
今、部長がどんな顔で話しているのか知りたいのに、見れなくて。
『……彩星はイヤなんだろ?妬くとかそういうのも含めて。』
言えないまま、飲み込むこともなく、喉に引っ掛かったままの歪(いびつ)な形が、少しずつシュワシュワと溶けて、小さくなっていく。
『彩星しか見てないから。……俺は、彩星だけ、想ってるから。』
ドクン、と波打つ心臓を確かめるように胸に手を当てて、そっと顔を上げた。
少し眩しそうに細めた瞳は、優しい。
でも力強く、真っ直ぐ私を捕まえた。
『俺が一緒にいたくて、大切にしたくて、可愛くて仕方ないのは、お前だけだ。』
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