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日陰に停めていたのに、車内は蒸し暑くて、走り出すと同時に全開にしたウィンドウから入ってくる風が心地よい。
頭に乗せたままのサングラスを、部長の真似をしてカチューシャにした。
海沿いの道を走って、市街地をいくつか抜けて……少し優しくなった日差しの暖かさと、風の心地よさのせいで、ゆったりしたシートへ身体がどんどん沈んでいく。
『あ……。せ?……あや……。』
ユラユラと頭が揺れて、ぼんやりと瞳を開いたら、部長が覗き込むように私を見ていて。
『……ん?』
『着いたよ、家。』
『い、……えっ?!』
見渡したら、今朝と同じ景色。
部長の香りのする部屋。
寝心地のいいベッドに横たわる私。
いつの間にか眠っていて。
気付かないまま、また帰ってきていて。
『気持ち良さそうに寝てたから、起こしたくなかったんだ。』
キッチンに立った部長が、冷蔵庫から缶ビールを取り出して、プシュッと音がした。
『喉、渇かない?』
『何か飲みたいです。』
カラカラに渇いた喉が、強く水分を欲する。
『何でもいい?』
『はい。』
部長がまたベッドに腰掛けて、上半身を起こしたあたしの肩に腕を回して支えてくれる。
手にしているビールををくれる気配のない部長を見たら、得意気に微笑んでいて。
部長は視線を合わせたまま、何も言わずにビールを口に含んだ。
『……!』
あたしの唇を割って、流れてくる苦い味。
ちょっと温くて苦い水分が、渇いた喉をほんの少し潤した。
だけど、まだ渇きは止まらなくて。
『まだ、欲しいです。』
『どっちがいい?』
『どっち?』
『直接飲むのと、俺から飲むの。……どっちがいい?』
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