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『自分で、『じゃ、あげない。』
缶ビールに伸ばした私の手が、そのまま空を切った。
『飲みたい?』
『はい……んっ!』
私の返事を待っていたように、ビールを口に含んだ部長が、また私の唇を割り入る。
息をする間もなく、注ぎ込まれて。
私の唇の端から零れた1筋を、缶の冷たさで冷えた長い人指し指が掬った。
『美味しい?』
そう問いかける部長は、妖艶な表情になっていて。
問いかけに答えようとする私は、アルコールが回った訳でもないのに、クラクラする。
だから、コクンって頷くのが、精一杯で。
『もっと、欲しい?』
喉を潤していくビールは、ちょっと温くてほろ苦いのに、部長のキスは冷たくて、甘くて。
癖になっちゃいそうな、大人の味がしたから。
部長の首に腕を回して、私からキスをして、海での出来事を上書きした。
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