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強い鼓動の音が、耳に響いた気がする。
私のとは違うそのリズムは、ほんの少しだけど、速くなっている感じもして。
『……知りたい?』
『はい。』
『彩星は?……彩星はいつから俺のこと好き?』
『部長、私が聞いてるのに。』
『………た、時かな。』
テラスへ出る扉が開けられて、部長の声は店内の賑やかさでかき消された。
『あの……いま、聞こえなかったです。』
『聞こえてただろ?それだけくっついてたんだから。もう言わないよ。』
『本当に聞こえなかったんです!』
『じゃあさ、彩星が言ってくれたら、もう1回言うよ。』
結局、あたしから言う感じになっちゃってるし…。
くるりと身体を反転した部長の胸に、すっぽりと包まれた。
『こうしてたら、言える?』
余計に…言えません。顔を見られてても、言えないけど。
『……早く教えて?』
唇を寄せられた耳に、吐息がかかって、また身体が反応しちゃう。
『かーわいっ。』
ギュッと、抱きしめられて。
呼吸が苦しくなるくらい、鼓動の速さは最高潮になっていく。
『テラスで、抱きしめられた時…。』
笑った部長が、腕を緩めた。
『……俺も。』
『えっ?』
『俺も、テラスで抱き寄せた時から……ちゃんと好きになったんだと思う。』
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