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グラスを傾けたら、夜空になりつつある藍色を帯びた空と目が合った。
星たちは順を争うように、次々と煌めき始めている。
『今日はよく見えそうだよ。』
『あ、誠さん。』
『お疲れ。悪いな、急に来て。』
部長と繋いでいた手を離そうとしたら、指を絡めて引き寄せられて。
『夏輝、やっと連れてきたな。』
『どういう意味だよ。』
私も言った意味が分からなくて、口を結んで誠さんに視線を送った。
『初めて彩星ちゃん連れてきた日、夏輝の独占欲全開だったから、そのうち連れてくるだろうなと思ってたんだよ。』
『あーもういい、早く戻れっ!』
部長が誠さんを追い払うように手を振る。
眉間に皺を寄せてるのに耳が赤くなってて……ちょっとだけ恥ずかしそうで。
こんな部長、見たことない。
なんか……なんか、可愛いっ。
『……ぷっ。』
思わず吹き出しちゃった。
『笑われてんぞー、夏輝。』
ケラケラ笑いながら、誠さんがまた仕事に戻っていく。
『あ、彩星ちゃん、今日は星がよく見えるはずだから。』
あの日、またおいでって言ってくれたの、覚えててくれたんだ…。
『いいから、早く働け!』
部長、どんどん真っ赤になっちゃってる。
『彩星も、見過ぎだから。』
誠さんがご馳走してくれたミントジュレップを、部長が傾けた。
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