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前に進まない足は、後ろにはすんなりと動いてくれる。 3歩目で踵を返して、部長に背を向けた。 一緒にいたいのに、いたくなくて。 誰のものか分からない、砂浜の足跡を一心不乱に辿る。 夏の日差しは容赦なく私にも降り注ぐ。 道路を挟んで少し歩いたところにあるコンビニで涼もう。ずっと外にいたら、きっと倒れちゃう。 バッグの中で鳴る携帯の音。 賑やかなBGMのせいで聞こえてないフリをした。 1回。 2回。 何度も何度も繰り返される着信に、やっぱり出なきゃいけないって思って。 『彩星!どこにいる?!』 『え、と……コンビニ…です。』 『分かった。絶対そこにいて。』 もしもし、と言う前に始まった会話は、ものの数秒で切られた。 聞いたことのない、部長の声。 甘くて低い、大好きな声じゃなかった。 怒ったような、少し乱暴な、強くて大きい声だった。 『……っ。』 買ったばかりのソフトクリームは、涙のせいで、滲んだ甘さがする。 私のせいなのかな。 こんなことしちゃいけないって、簡単に分かることだけど、整理のつかない気持ちがある。 『……っはぁ。』 走ってきた部長は、息を切らしながら勢いを緩めることなく、私の肩を掴んだ。 『ぶ……ちょっ。』 『お前、なに考えてんだよ!勝手にいなくなるなよ!すっげー探したんだぞ?!電話も出ないし、車のとこにもいないし。』 『……ごめんなさい。』 溜め息と同時に離された手。 冷静になろうとしている部長の瞳は、すぐにそらされて、冷たく鋭くなった。 その瞬間、突き放された気持ちがして。 私、何してるんだろう……って、後悔の波が襲ってきて。 『ごめんなさいっ……。』 『もういいから、泣くな。……それと、髪食ってる。』 微笑んでくれた表情に、また涙が溢れてきた。 『理由はあとでちゃんと聞くから。だから、もう泣くな。』
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