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ポワーンとした雰囲気を引っ提げて、椅子に座る。 可愛いとカッコいいが合わさった反則スマイルが、数秒前の過去の記憶となって、現在(いま)になっても私の時間を止めている。 『高梨さん。』 スライドショーに切り替わったパソコン画面の横から、永井さんがヒョコっと顔を出した。 『……あ、は、はい?!』 最近コンタクトに変えた、奥二重の瞳が、冷静に私を見る。 『部長って、やっぱりS?』 『はい?』 …って、何を聞くんですか! 『そりゃ、なぁ?高梨さん。』 ホワイトボードに、明日のミーティング事項を箇条書きしている部長が振り向いた。 部長、まで……。 『やっぱり、Sなんですね。やっぱりかぁ。』 永井さんは、妙に納得したような頷き方をして、またパソコンとにらめっこを始めた。 部長は、私のことをまたしても得意気に見下ろしている。 視線を瞬間より長く繋いでから、ホワイトボードに向き直ってしまった。 私の頭の中では、永井さんの質問の意図と何がイコールになるのか、検索エンジンが全速力で動いているけれど。 結果として出てくるのは、色々な表情の部長ばかりだ。
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