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クルーザーの柵に肘を突いて、水面をぼんやりと眺める。 船体に当たって、音を立てて返っていく波。 先に波が立ったのか、クルーザーが波を起こしたのか。 こんなこと、考えても答えなんか出ないって分かってるのに。 ふと、甘い香りが鼻を掠めて。 振り返ったけど、部長はいなかった。 大好きな香りじゃないって、なんとなく分かっていたのに期待してしまう。 『お疲れさま。喉、渇いてない?』 振り返ったのと反対側から聞こえた声。 ビールを持った瀬名さんが、甘い香りを纏って優しく微笑んでいた。
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