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『お疲れさまです。』 浴衣姿の瀬名さんは、いつものスーツ姿に比べて、穏やかに感じる。 話し方も、視線も、表情も。 持ってきてくれたビールをもらって、飲み口で乾杯をした。 『1人で来るんだったら、言ってくれたら良かったのに。』 『1人じゃなかったんですよ?そうなっちゃっただけで。』 そもそも、瀬名さんがエレベーターであんなことしたから……でも、部長が来ないのは出張だから、瀬名さんには関係ないのかな。 『俺も、1人。』 『引く手数多じゃないですか。』 『いや、そういうの苦手だから。』 瀬名さんが小さく手をヒラヒラとする。 『苦手?』 『ご飯行くのとか、そういうのは仲良けりゃ行けるけど。好きな子と見たいって思うよ?花火は。』 私に向き直って見つめる、真っ直ぐな瞳。 部長みたいに見透かすような感じとか吸い込まれそうな感じとは違うけど、瀬名さんのキラキラとした瞳は少し潤んでいる。 『好きになってくれたら、本当に嬉しいなって、そう思ってるよ。』 ちょっとだけ首を傾げて微笑む瀬名さんが、いつもと違うから。 もしかしたら、瀬名さんって穏やかな人なのかもしれないって思えて。 私のことをそう思ってくれるのは、困るけれど。 『……あ、始まるみたいだよ。』 花火が轟音を引き連れて咲いた。 最初は、綺麗な赤。 私の中で、瀬名さんが少しだけ親しみやすくなってきた。
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