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『あったよ。グレフル。』
『すみません。ありがとうございます。』
フリードリンク制だからか、周りの人もお酒が進んでいる。
『晴れてよかったね。俺、この花火大会来るの3年振りなんだ。』
『あ、アメリカに行ってたからですよね?』
『そう。向こうも花火はあるけど、やっぱり日本のが綺麗だと思うよ。』
そう遠くない距離の花火を、懐かしむように見つめる瀬名さんの横顔に、花火の光が色を映す。
グレープフルーツサワーを飲んで、ふぅっと息をついた。
『ねぇ、携帯鳴ってない?』
巾着が瀬名さんに当たっていて、振動が伝わっていたみたい。
『ごめんなさい、鳴ってますね。』
取り出した携帯の画面が表示に、花火に負けないくらいの鼓動の音を引き出される。
〈着信中 三浦 夏輝〉
ドキドキする鼓動と、花火の迫力のある音が混ざる。
『ちょっと、すみません。』
『ここで。………ここで話しなよ。』
瀬名さんから少し離れようとしたら、巾着を掛けた私の腕を、瀬名さんがグッと掴んだ。
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