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『………っと、あの…。』
その間も携帯は震え続けている。
『早く出ないと切れちゃうよ。』
瀬名さんが掴んでいた手を離してくれた。
『……もしもし。』
『彩星?……出るの遅い。』
『ごめんなさい。』
部長の声の後ろも、賑やかな雰囲気。
『優と麻耶ちゃんと一緒?』
『あ、いえ……2人きりにしてあげたくて。』
『そういう雰囲気になったのか。じゃあ1人なの?』
『っと、……ではないんですけど。』
『……ふぅーん。彩星さ、俺と花火見たい?』
『もちろん、見たいです。まだ名古屋ですか?』
そんなの、見たいに決まってるじゃないですか…。
でも見れないから、せめて写メだけでも……と思って送ったのに。
『……彩星?』
部長が、電話の向こうから私に話しかけるのと同じタイミングで、肩を軽く叩かれて。
瀬名さんを見たら、ふんわりと微笑みながら、お酒を持っていない手をヒラヒラと見せた。
肩に置かれた、手を辿る。
『じゃあ、一緒に見よっか。』
会いたくて、話したくて、触れたくて仕方ない、大好きな人。
ヘーゼルの瞳に映るのは、青い花火の色と、私。
部長のいつも通りの笑顔が、そこにあった。
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