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……どうして、部長がいるの?
まだ名古屋にいるはずで。
そうじゃないとしても、このクルーザーには乗れてないはずで。
目の前の光景が、たった今、起こっていることだと認識できない。
切れている携帯を耳に当てたまま、立ち尽くす。
花火の轟音とは違う、とくんとくんと聞こえる、私の鼓動。
部長の瞳に映る私。
会えないはずの部長が、目の前にいて。
触れられないはずの体温が、私に伝わって。
電話の向こうにあった声が、直接聞こえた。
『……彩星?』
『は、はいっ。』
もう1度聞こえた大好きな声で、現実に引き戻された。
『お前が、好きだ。』
私だけに聞こえる、囁く声。
部長がもう1歩近付いて、私を抱き寄せた。
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