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沙衣さんは、部長のことがまだ好きなんだ。
いつからいつまで彼氏と彼女だったのか知らないし、知りたくないけど、ずっとずっと好きだったんだ。
私が部長に恋をするよりも、もっと前から。
『沙衣、俺なんか忘れろよ。関係者だから社内にも入れるし、こうしてイベントにも参加できてるけど……いい加減迷惑だ。』
…カンケイシャ?
関係者?!
社内の人なの?沙衣さんって。
『どんなに伝えてもらっても、沙衣の気持ちには、答えられないんだ。』
周囲がザワザワとしている。
沙衣さんに向かって、シャッターを切る人までいて。
『……やめろ!沙衣、中に入ろう。』
状況を見守っていた瀬名さんが、沙衣さんの肩に手を添えて船内に歩いていく。
その後ろ姿は、脆くて儚い。
部長に想いを寄せる者同士の、痛みが見える。
2人が扉の向こうに消えて。
部長は、ふぅっと息をついた。
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