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『って言うか、なにその女っ!』
力強く握られたグラス。
言葉の刺々しさとは裏腹に、グラスの中身は穏やかなカルアミルク。
麻耶と久しぶりにご飯を食べている。
もちろん、誠さんのお店ではない。
お互いの近況を話した後、恋話(コイバナ)になって。
麻耶は神谷さんと、付き合う1歩手前。
まだ告白をされてないから、彼女ではないみたいだけど、デート中に手も繋いでいないらしい。
……そんなところも、神谷さんっぽいなぁ。照れながら鼻を摘まむ姿が容易に想像できて可笑しくなる。
そして、私の番。
ここ最近の大体のことはメールで話していたけど、沙衣さんのこと、瀬名さんのことはメールじゃ上手く言えなくて。
『部長も部長だよっ!考えさせてって、一体どういうことっ?!』
麻耶サマ、本日お怒りモードのようです。
怒りたいのは私なんだけど、怒りの感情よりも勝っている感情がある。
切なさ+悲しさ+戸惑い+etc。
何て名前をつけていいのか分からない。
『で?花火大会は行けない、と。なんじゃそりゃ!……ねぇ、彩星?』
『ん?』
マッシュポテトを頬張った麻耶が、真っ直ぐ私を見ている。
『花火大会、絶対来てね。って言うか行こう!』
『だって部長は』
『関係ないって。それとは関係なく、花火見よう?』
『…う、ん。』
半ば強引に麻耶に押しきられて、明日の花火大会には行くことになった。
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