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廊下で話してから、部長と話していない。 メールもしていない。 部長からも、アクションはない。 季節は真夏。 青い空、白い雲、緑の木々。 冬とは真逆の華やかな服の色たち。 素足が似合う季節。 なのに。 こんなにも色褪せて見える。 今日は花火大会で、定時が1時間繰り上げになった。 通りすぎる人のキラキラした表情が羨ましい。 『あ、お疲れー。』 浴衣の着付けを予約した美容室に入ると、ちょうど受付をすませた麻耶がいた。 待ち合わせ時間より少し早く来た方がいいって麻耶からのメール通り、ものすごく混んでいる。 『着付け終わったら、お茶してから行かない?』 カーテンで仕切られた隣のスペースから、麻耶が話し掛けてきた。 『いいけど……神谷さんと待ち合わせは?』 『カフェ。』 あ、そーいうこと、ね。 今日は麻耶だけでも楽しんでもらわないと気が済まない。 うぐっ……。 帯をグッと締められて、思わず息が止まりそうになった。
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