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『麻耶ちゃん。』 待ち合わせたカフェに着いて、店内を見渡していた私たちを、先に見つけてくれた神谷さんは、黒の浴衣を着こなしている。 立ち上がって手まで挙げるから、余計に目立っちゃって。 ……周りの視線に気付いてます?神谷さん。 爽やかな色気、漏れてますよ。 固まっちゃった麻耶の腕を引っ張りながら、視線を一手に引き受けて歩く。 『こ、こんにちは。お待たせしてっ…ごめ、んなさいっ。』 噛みそうになりながらも、ちゃんと麻耶は神谷さんの瞳を見て話している。 相変わらず真っ赤な顔だけど……今日は一段と赤い。 『いえいえ、俺もちょうど入ったくらいだったから大丈夫。 高梨さん、お疲れー。』 『あ、お疲れさまですっ。』 『どう?& eyeのストーン届いた?』 『私のは届いたんですけど…神谷さんのが週明けになるみたいなんです。人気らしくて。』 3人でテーブルに置かれたメニューを見ながら、仕事の話をするけれど、麻耶には分からない話で。 神谷さんとメニューを交互に見る麻耶が、ちょっと膨れている。 『…麻耶ちゃん。』 『はいっ。』 『浴衣似合ってるね。今日は俺から離れないでね?』 顔からシューっと湯気が出そうなほど真っ赤になった麻耶。 恋する女の子の感じ、全開。 って、言った神谷さんも視線を外にそらしてて。 この2人、歯医者にいた頃から変わらないなぁ。 見てるこっちの方が、恥ずかしくなる。
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