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『さて、行こうか。』
『はい…。』
車に乗るまでと、私の家に着いてから部屋までの距離だから、なんでもいいって言えばそうなんだけど。
『あまり見ないでください。』
『なんで?可愛いと思うんだけど。』
部長が貸してくれたのは、大きなサマーニット。
スカートなんかもちろん持ってないし、パンツも丈が余る。
それでこれを選んでくれたらしいけど。
『俺が着ても大きいサイズだから、彩星ならワンピみたいになるかと思って。』
って……確かにワンピっぽくなりましたけど。
ミニスカート丈過ぎます。
シートに座ると一層持ち上がるから、裾を引っ張って、一緒に袖で隠すけど恥ずかしい。
『あ、いくつか服とか置いときなよ。俺の家に。着替えがあれば、いつでも泊まれるでしょ?』
『……うん。』
昨日といい今日といい、ものすごく擽ったい。
彼女なんだって意識することばかり。
『ランチ、俺の行きたいところでいい?』
『いいですよ。どこなんですか?』
『俺の家の先のほうにある、京風ダイニング。』
『部長の家の先って……。』
『あまり行ったことないでしょ?』
会社から駅に向かう途中の大きな交差点を、私の家と逆方面へ進むと、ベイサイドの住宅街へ続いていて。
部長の住んでいるタワーマンションの周辺は、同じようなマンションとオフィスビルが並んでいる。
『会社からも、俺の家からも見える大きな橋の近くまで行くんだ。』
頭の中で地図を広げていた私に、大体の場所をナビしてくれた。
『きっと気に入ってくれると思うから、楽しみにしてて。』
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