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『ごめん、すごく嫌な気分させただろ。』
『……。』
『この前から、ずっと、ごめん。』
そんなことないって、言ってあげたい。こうして守ってくれるようにしてくれて、気持ちを伝えてくれたから。
でも、実際は怖くて切なくて、心配で不安でハラハラしたから言葉が見つからなくなる。
『俺のせいだ。本当、ごめん。』
ホッとして、自然と頬を伝う涙が、私の代わりに返事をしていた。
『……ごめんなさい。泣くつもりないんですけど…。』
『彩星は、何も謝らなくていいから。気が済むまで泣いていいよ。』
部長がそっと抱きしめ直してくれる。
私のところに戻ってきたような感覚にホッとして、部長のシャツを涙が濡らしていく。
『ねぇ、さっきのって絶対に沙衣だよね?』
『うん、100%本物でしょ!やっぱり超可愛くて綺麗だったね!』
『泣いてたけど…でもそれも絵になるっていうか。』
部長の向こうで、花火に見入りながら話す女子社員の声が、耳に届いた。
本物って…?
社内の人なのに写真撮られたり、いるだけで騒がれたりするのは……どうして?
涙が止まる頃、部長が髪を撫でてくれた。
『沙衣のことだけど。』
『はい…。』
『誤解してほしくないからきちんと説明するね。聞いてくれる?』
少し落ち着いたズキズキが、また疼こうとするから必死で抑えて、頷いた。
『沙衣は、元々は大学の後輩。だから優も誠も、瀬名も知ってる。』
『はい。』
『1度だけ付き合ったけど、それは社会人になってから。会社も別だし、そもそも沙衣は会社員じゃないんだ。』
『でも関係者、なんですよね?』
『そうだね、関係者。……俺の企画の、ね。』
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