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モデルの女の子が何て呟いているかが話題になり始めていると私の耳に入ったのは、CMがスタートしてから2日後だった。
& eye
綺麗になぁれ
叶いますように
GOOD LUCK
何も言わずに、ウインク
全部で5種類のCMを作ってもらった。
最終チェックの日、再度CDーR焼いてもらって、小会議室で打ち合わせをした。
神谷さんは来客中で、追って合流することになって。
部長と2人きりのこの空間に、キラキラした音楽が流れ始めた。
こちらの希望とイメージ通りの展開、センスのある色使い。
女の子の顔がアップになる。
『……………。』
……今の唇の動き、なんだろう。
& eyeじゃない。
『部長、今のって、向こうの提案分なのか、打ち合わせした時に纏めた案にはなかった動きに見えたんですけど、どうでした?』
『分からない?これも実際に流してもらおうかと思うけど。』
部長が、もう1度再生ボタンを押した。
何て言ってるか分からないと、いくら部長でも担当者としてOKできなくて。
『何て言ってるのか、分かりますか?』
『分かるよ。仲良くしてもらってる担当者に、もう1つ作ってもらったのは俺だからね。』
『部長がっ?!』
『そう。俺の企画案、とまではいかないか。』
長机に頬杖を突いて、少し得意気に微笑む、眼鏡姿の部長。
色っぽさとかそういう雰囲気が無かったこの部屋の空気が、一瞬にして変わった。
『何て言ってるのか、教えてください。』
危うくいつも通り飲み込まれそうになるところだった。
『……………。』
モデルさんみたいに唇を動かす部長。
やっぱり、& eyeじゃない。
『分かった?』
まるでクイズをしているみたいに、なかなか答えを教えてくれない部長に首を振って答えた。
『キミが スキ。』
……キミガ スキ?
『って、モデルは言ったんだよ。頑張った彩星に伝えたくて。』
……私に、伝えたくて?
ポーッとする私の瞳には、いたずらに笑う部長が映る。
『流しても、問題ないセリフでしょ?恋愛& eyeに含まれない?』
……まさか、このバージョンが最初に流れるとは。
武田さんには、思わず秘密にしちゃったから、自分で当ててもらうことにしよう。
それまでは、私と部長だけの秘密。
部長が私にくれた、プレゼントだから。
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