17

32/38
139人が本棚に入れています
本棚に追加
/38ページ
『いらっしゃい。』 先に帰っていた部長が、玄関の扉を開けてくれた。 『ただいま……。』 これはこれで新鮮な感じがして、なんだかちょっと照れちゃう。 『お腹空いてるでしょ?たまにはと思って、ご飯作ってあるよ。』 『部長のご飯美味しいから、嬉しいです。』 『じゃあ、彩星が今日はグラスを準備する係ね。』 『はーい。』 黒いソムリエエプロンをした部長は、まだシンプルな白いワイシャツを着たままで。 帰ってからすぐ作って、私が来るのを待っててくれたんだって分かったから、いつも私がされてるみたいに、キッチンでホワイトシチューをよそっている部長に、後ろから抱きついて背中に耳をつけた。 『……どうした?』 『なんでもない…ですっ。』 キッチンカウンターにシチューの入ったお皿を置いて、部長が私の腕をそっと解いた。 『温かいうちに食べよう。……くっつくのは、その後でもいいでしょ?』 『……っ。』 見上げている私のおでこを人差し指でツンってしてから、部長が離れた。
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!