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『いらっしゃい。』
先に帰っていた部長が、玄関の扉を開けてくれた。
『ただいま……。』
これはこれで新鮮な感じがして、なんだかちょっと照れちゃう。
『お腹空いてるでしょ?たまにはと思って、ご飯作ってあるよ。』
『部長のご飯美味しいから、嬉しいです。』
『じゃあ、彩星が今日はグラスを準備する係ね。』
『はーい。』
黒いソムリエエプロンをした部長は、まだシンプルな白いワイシャツを着たままで。
帰ってからすぐ作って、私が来るのを待っててくれたんだって分かったから、いつも私がされてるみたいに、キッチンでホワイトシチューをよそっている部長に、後ろから抱きついて背中に耳をつけた。
『……どうした?』
『なんでもない…ですっ。』
キッチンカウンターにシチューの入ったお皿を置いて、部長が私の腕をそっと解いた。
『温かいうちに食べよう。……くっつくのは、その後でもいいでしょ?』
『……っ。』
見上げている私のおでこを人差し指でツンってしてから、部長が離れた。
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