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ハイテックで買ったキャンドル。
ソカドのチョコレート。
向こうじゃ珍しくないけど、日本でも知られてきたらしいカントゥッチ。
ペックで買ったワインは、みんなで開けられたらいいんだけど。
日本に帰れたのは、最初の年末年始とその後の夏休みだけ。
大型連休の時や休みが取れた時は、彩星が来てくれることもあったけど、その度に見送るのが辛くて。
引き留めたくて仕方なかった。
もう仕事なんか放り出して、一緒にいてくれ、と言いそうになる夜が、何度あっただろう。
空港で遠くなっていく彩星の姿が、愛しくて堪らなくて。
俺が、仕事をしてほしくて離れることを選んだのに。
いつの間にか俺の方が、寂しがり屋になっていたみたいだ。
ミラノに滞在して、3年目になる春。
空港のロビーを行き交う人の大半が、日本人であることに安心感を覚える。
今回は2週間だけ、仕事で戻ってくることになった。
このまま戻らずに居られたらと思うと、到着したばかりなのに、既に切なさがこみ上げてくる。
『部長ーっ!』
『ただいま、彩星。』
7ヶ月ぶりに会った彩星は、大人っぽくなって、綺麗になっていた。
思わず、妬いてしまうくらいに。
周りの視線なんか気にしていられない。
今すぐに、この腕に閉じ込めてしまいたい衝動を抑えるものは、ミラノに忘れてきたみたいだ。
戸惑う彩星を無視して、思い切り抱きしめて。
ほんのり赤くなった顔を上に向かせた。
『キスしたくて堪らないんだけど、いい?』
『……っ。』
何年経っても、すぐ真っ赤になるその表情を見たら、もっと苛めたくなって。
『彩星、会いたかったよ。』
そう耳元で囁いてから、そっと唇を合わせた。
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