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『あ、これっ!』
そう言ってから、嬉しそうにソカドの箱を両手で持つ彼女。
ミラノに来てくれた時にいくつか食べ比べたら、これが1番お気に入りだったから。
『でも、こんなにたくさん買ってきてくれるなんてビックリです。』
大好きなものならせっかくだしと思って、1ダース入りを買ってきた。
早速カラフルな包みから1つ出して、ジャンドゥーヤチョコレートを頬張っている。
……その表情が、可愛くて仕方ない。
『あのさ。感動の再会なのはよーく分かるんだけど。』
ワインボトルを持った優が、俺を現実に引き戻す。
『そろそろ、これ始めない?』
『そうだな。』
一時帰国したその夜、俺の家に集まってくれた。
誠も店が落ち着いたら駆けつけてくれるみたいだけど、他にも新しく出店したせいで、毎日多忙らしい。
『彩星ちゃん、こっち来て一緒に飲もうよ。』
バーカウンターに入って、瀬名が人数分のグラスにワインを注ぐ。
今でも彩星のことを気に入っているとは、優から聞かされていたけど……。
『そんな怖い顔するなよ、夏輝。』
俺の横を通り過ぎて、カウンターに向かう優に冷やかされて。
……せっかく集まってもらったけど、早く彩星を1人占めしたいのが本心で。
『瀬名さん、私ワイン苦手なので…。』
『せっかくだから、本当にちょっとだけ飲んでみたら?
良いワインだから、もしかしたら口に合うかもしれないよ?』
彩星には悪いけど、酔ってもらえれば、みんなを帰す口実になるかもしれないから。
それに、酔った彩星が見たい。
俺の大好きなあの潤んだ瞳に、映りこみたいんだ。
……ごめん、彩星。
今日は俺のワガママ、聞いて。
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