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夏の発売予定に間に合うように、再来週までに決めることがたくさんある。 ネーミング、デザイン、液状…。 煮詰まった時は、屋上で頭の中をリセットして。 細いパックのグレープフルーツジュースにストローを差して、一口分を吸う。 『どう?コラボの件は進んでる?』 『あ、お疲れさまです。発売予定が見えてきたので、あまりのんびりもできないんですけど、煮詰まってきちゃって。』 少し後に来た武田さんが隣に座った。 『そういえば、さっき部長から電話あったみたいよ。立花さんが探してたから、戻って聞いてみたら? 』 『はいっ、そうしますっ。』 部長からの電話。 私が出たかったな。 『立花さん。』 『高梨ちゃん、惜しい!あとちょっと早かったら部長と話せたのに!』 ホワイトボードに向かって、部長の行動予定を書いている立花さんが振り向いた。 〈明後日一時帰国予定〉 『…だって。よかったねぇ。』 冷やかすような表情で微笑む立花さんが、デスクに戻った。 こういうサプライズは、仕事のモチベーションが上がっちゃう。 部長に企画を見てもらえるようにしないと。 『高梨ちゃん、ちょっと下のコンビニ行ってきてもらってもいい?』 『はい。』 『いつものカフェオレ買ってきてもらえる?』 『了解ですっ。』 スキップしちゃいそうなほど、足取りは軽快で。 明後日の服も、何を着ようかなって考えちゃったりして。 1Fのコンビニに着いて、冷蔵庫で冷やされていたチョコとオレンジティーと、立花さんのカフェオレを持つ。 『あ、これも一緒で。』 右側から伸びてきた、明るいネイビーのスーツ。 いつか冬也がそうした時みたいな光景に、身体が固まったように動かない。 唯一動くのは、頭の中だけ。 思いつくことが1つあるけど、それは有り得ないことで。 『これで。』 ぼんやりする私をそのままに、お会計を済ませるその人が隣に立った。 『ほら、行くよ。』 コンビニの袋を持ったその人は、私の顔を覗き込んできて。 …………有り得ない。 明後日帰国の部長が、なぜか私の手を引いている。
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